歯の本数で変わる!毎日の生活と健康寿命
歯の本数は、食事を楽しむことだけでなく、私たちの「健康寿命」にも深く関わっていることがわかっています。
健康寿命とは、介護や医療に頼らず、自立した生活を送れる期間のことです。最近の研究では、歯が多く残っている人ほど健康寿命が長く、心身ともに元気でいられることが明らかになっています。
今回は、歯の本数と健康寿命の関係について詳しくご説明いたします。
歯が20本以上ある人の方が健康寿命が長くなる
近年の研究で、「歯の本数」は健康寿命を左右する重要な要素のひとつであることが判明しています。
例えば、65歳以上の高齢者を対象にした3年間の追跡調査では、20本以上歯がある人は、そうでない人と比べて健康寿命が長いことがわかりました。歯が20本以上ある人は、0本の人に比べて男性で約3カ月、女性で約2カ月半も健康寿命が長く、要介護となる期間も男性で約1カ月、女性で約2カ月も短いことが示されています。
つまり、歯の健康を守ることが、人生の質を高める重要なポイントになるのです。
歯が減ると日々の暮らしはどう変わる?
歯が少なくなると、日常生活にさまざまな影響が出てきます。最初は小さな変化でも、積み重なることで生活の質(QOL)に大きな差が生じることもあります。
食事の質が変わる
歯の本数は、「食べられるもの」を決める大きな要素です。
歯が20本以上あればほとんどの食事を楽しめますが、それ以下になると「フランスパン」や「たくわん」などの硬い食べ物が食べづらくなります。さらに、5本以下になると「バナナ」や「うどん」のような柔らかいものしか食べられなくなってしまいます。
この変化は徐々に進むため、気づいたときには食べられるものが大きく制限されていることも少なくありません。
食べる楽しみが減る
食べられるものが限られてくると、メニューがワンパターンになってしまいがちです。
「好きなものが食べられない」「よく噛めない」「食事に時間がかかる」といったストレスが積み重なると、やがて食事自体が苦痛になってしまいます。食事の楽しみを失うと、気持ちが沈み、生活の質や満足度も低下してしまいます。
人との関わり方にも影響
歯が減ると、滑舌が悪くなったり、見た目が気になったりして、会話に自信が持てなくなることも少なくありません。
また、「みんなと同じものが食べられない」「食事に時間がかかってしまう」といった理由で外食や会食を避けるようになり、人付き合いが減ってしまう傾向があります。これが続くと、将来的に社会的な孤立につながる可能性もあります。
歯の減少と要介護リスクの関係
歯が少なくなると、次のような要因が積み重なり、要介護のリスクが高まります。
栄養バランスが崩れる
歯が少なくなると、食べられる食品が限られ、栄養が偏りやすくなります。
特に、肉や野菜を避けがちになると、タンパク質やビタミンが不足し、筋力や免疫力が低下。その結果、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病のリスクも高まります。
認知機能への影響
噛む力(咀嚼能力)が低下すると、脳への刺激が減り、認知機能の低下につながることがわかっています。
また、噛む力が弱まることで生野菜の摂取が減ると、ビタミン不足によって認知症のリスクが高まる可能性もあります。
社会活動の減少
歯が減ることで、会話や表情の変化、食事の制限などが生じ、外出や交流の機会が減る原因にもなります。
高齢者の社会参加は要介護の予防につながるため、歯の健康を守ることは、社会的なつながりを維持するためにも大切です。
今からでも遅くない!歯を守るためにできること
歯の健康を守るために、今からできることを実践していきましょう。
正しい歯磨きを習慣に
毎日の歯磨きは、歯の寿命を左右する大切な習慣。歯ブラシに加えて、歯間ブラシやデンタルフロスも活用し、しっかりお口のケアを行いましょう。
よく噛んで食べる
「一口30回」を目安に、しっかり噛む習慣をつけましょう。
噛むことで歯の健康を維持できるだけでなく、消化の助けにもなります。さらに、満腹感を得やすくなるため、食べすぎ防止にもつながります。
失った歯を放置しない
歯を失ったままにすると、噛み合わせのバランスが崩れ、残っている歯に負担がかかります。
入れ歯やブリッジ、インプラントなど、自分に合った方法で歯を補うことが大切です。
定期検診を受ける
むし歯や歯周病は、自覚症状がないまま進行することが多いため、早期発見・早期治療が重要です。定期的な歯科検診を習慣にしましょう。
「人生100年時代」を元気に過ごせるように
歯の健康は、日々の生活の質だけでなく、将来の健康寿命にも大きく関わっています。
しかし、その大切さに気づくのは、食事や会話に支障を感じたとき、という人も少なくありません。「まだ大丈夫」と思っていても、歯の健康は徐々に損なわれていきます。未来の歯の健康は、今のケア次第で大きく変わります。
毎日の歯磨きと、3〜6カ月に1回の定期検診を続けて、大切な歯を守っていきましょう。